半世紀前の1960年、時計の歴史を塗り替えた画期的なシステムを搭載した「音叉時計」が発表されました。Accuracy(精密)とElectron(電子)を組み合わせた「アキュトロン」の名前で発表された音叉時計。機械式時計にみられるぜんまいやてんぷの代わりに、チューニングフォーク(音叉)、水銀電池、電磁コイル、トランジスタ回路で駆動する、世界初のシステムを搭載した画期的な時計です。これは、クオーツ時計が誕生する以前の1960年10月に、マックス・ヘッツェル(Max Hetzel)によって開発されました。彼は、スイスのバーゼルに生まれ1948年にビエンヌのブローバに入社した発明家です。駆動のシステムを簡単に説明すると、時計内部のコイルに電圧をかけ、音叉から発生する正確な共鳴振動(360振動/秒)によってインデックス車を回転させ運針する仕組みになります。
★機械式時計に耳を付けるとカチカチと聞こえますが、アキュトロンの場合はポーンとという電子音に似た心地よいハーモニクス音が聞こえてきます(海外ではハミングといいます)。また、あまり知られていませんが、アキュトロンはNASAが実施した46回におよぶ宇宙飛行に使用されました。1969年7月20日には、地球へのデータ送信をコントロールする計時装置「アキュトロン・タイマー」が宇宙飛行士のニール・アームストロングとバズ・オルドリンによって月面に設置されています。
初代ムーブメントのCal.214に使われたインデックス車は直径2.4ミリ、厚さ0.04ミリ。この小さな部品に320もの歯を切るという精密な加工が施されています。ハイビートの機械式時計が1秒当たり8~10振動であるのに対し、音叉時計は360振動の高振動を生みだし、日差2秒という当時としては驚愕(きょうがく)の高精度を実現しました。
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